(10/5 14:30 補記)

下記に記載されている仮説検証ですが、現段階では検証結果及び考察は未完成となっておりますので、ご了承いただいた上で閲覧ください。

【背景と目的】

　レースレベルの高い馬で負けた馬の次走というのは妙味を生み出しやすい、というのは、予想において非常に重要なウェイトを占めており、古くはアルファベースの木下健氏が、近年ではメシ馬氏の著書である穴パターン事典によって、いの一番に取り上げている。
　また、キムラヨウヘイ氏やとうけいば氏といった、メシ馬氏と同様、若手ながら各方面でのメディア露出を果たした予想家についても、「独自のレースレベル予想」「降格ローテ」といったレースレベルに関するキーワードが散見され、能力比較を予想ファクターに取り入れている予想家、ないし馬券購入者においては、どのレースがハイレベル戦であったか、というのは最も関心のある事項になりつつある。
　一方で、その考えが近年あまりにも馬券購入者にとって浸透してきたことによって、明らかにハイレベル戦だと分かる馬の次走は、平場戦においてなどは特にオッズが辛くなってきている傾向にある。例えば、ハイレベルレースである出走馬のうち、4,5,7着の次走が1着の場合、6着馬については、本来その馬の想定オッズよりも（過去時点と比較して）過剰に売れる傾向にある。また、直近では「そのレースから何頭勝ち上がりが輩出されたか」を明示する出馬表なども出現し「ハイレベル戦のビジュアライズ」が進んできていることにより、馬券購入者はより時間的コスト、及びレース回顧技術を必要とせず、ハイレベル戦による妙味を追うことが出来るようになってきている。
　しかし、パリミチュエル方式を取る日本競馬のオッズにおいて「労せずに分かる情報」というのは、多くの馬券購入者がその情報に頼ることになり、結果として妙味が妙味でなくなってしまう。多くの馬券購入者にとって、競馬はギャンブルであり、「労せずにお金を儲けたい」の代名詞である以上、「労せずに分かる情報」の価値が高くなるというのは至極真っ当である。

　人の行く裏に道あり花の山、ハイレベル戦という項目に限定した場合、今後妙味を生み出せるのは、
1.人より早くハイレベル戦を見つける
2.ハイレベル戦を経由してきた馬の取捨精度を上げる
しかないと思われる。ハイレベル戦の総数は予想者側でコントロールできない定数項だからというのがその主たる理由である。

　このうち1.についての判断材料を増やすことが、今回の目的である。そして、その1つの方法として、「芝マイル戦以上において、ハイレベル戦として有効に利用しやすいのは、特定の条件を満たしたスローペース戦である」という仮説を考えた。この仮説に至った背景として、まずは以下の図を参照されたい。

図①

図②

　図①は今年屈指のハイレベル戦と呼ばれた共同通信杯、図②は、共同通信杯と同日に行われた3歳未勝利戦である。
　勝ち時計を見てもらうと分かるのだが、3歳未勝利戦の勝ち時計1.46.7は、共同通信杯の勝ち時計より0.9秒も速い。にもかかわらず、2着以下の次走の未勝利戦の勝ち鞍はゼロ。馬券圏内もウインザナドゥが1頭入っているのみである。

　また、この3歳未勝利戦の勝ち馬ゴールデンシロップが出走した弥生賞にも着目してみる。

図③

　こちらについても、道中は上り坂区間とはいえ13秒台が出るスローペースのレースだった。当時の競馬ファンのレース評価もあまり良いものではなく、実際勝ったタイトルホルダーは次走の皐月賞でも8番人気と伏兵扱いだったのだが、結果は2着。2着のシュネルマイスターも次走NHKマイルCで1着、4着のソーヴァリアントは次走の条件戦でとんでもないラップを繰り出して勝利したし、6着のタイムトゥヘヴンでさえニュージーランドTで2着と好走している。

　こうしたレースは今でこそハイレベル戦という評価を与えられているものの、当時は騒がれるほどのものではなかったと記憶している（メンバーが豪華など、レース前段階での評価は高かったかもしれないが）。
　上述のハイレベルレースにおいては、ラップ分析によって「急速なギアチェンジ戦」という点で相応の評価が出来るだろう。また、風による直線での負荷も違ってくると推察する。共同通信杯においても、弥生賞においても、直線は追い風でなかったため、直線のみ非常に負荷の高いレースとなっていたことが推測される。
　しかし、ハイレベル戦として出走馬が次走軒並み活躍した理由としては、それだけでなく、「レースによる調教効果と、スローペースがゆえの消耗度の少なさ」が挙げられるのではないかと考えている。

　調教は、例えばCW6Fの追い切りの場合、83.0-66.8-52.0-38.3-12.3のような数字がよく見受けられるが、これは1Fごとの数字に置き換えると16.2-14.8-13.7-13.0-13.0-12.3（ラスト2F目、3F目は26.0を等分割したもの）となり、最初スローから徐々に加速していくラップとなっている。
　レースになると、ここまで遅くはならないものの、前半ゆっくり→後半加速という流れは調教と全く同じスタイルであり、負荷が高い調教の役割を果たしているのではないかと推察した。
　また、調教でハードな負荷をかけたとしても、レースまでに疲れました、という馬はほとんどいない。もちろん、そうならないよう陣営がケアをしているということはあるのだが、スローペースのレースでも同じようなことが言えるのではないかと考えられる。

　上述の仮説を起点として、「特定のスローペースのレースは、ハイレベル戦として、出走馬は次走着順を上げる傾向にある」という議題について、検証を行いたい。

【分析手法】
※読み飛ばしていただいて構いません。

　対象となるレースにおいて、以下が正であることを示したい。

・レース上がり3Fが小さければ小さいほど、次走着順が良くなる
・MIN（ラスト3F目：ラスト1F目）が小さければ小さいほど、次走着順が良くなる
※ただし、これらの上がりは馬場及び風による補正がかけられた後のものとする

　これらは被説明変数Yを着順、説明変数X1をレース上がり3F、説明変数X2をMIN（ラスト3F目：ラスト1F目） MIN（ラスト3F目：ラスト1F目）とした重回帰分析による推定式によって以下の通り表すことが出来る。

Y = aX1 + bX2 + u （a,bはパラメータ、uは誤差項）

　ただし、X1はX2によって以下の通り表すことが出来る。

X1 = c - X2 ( cは残りの2F)

　よって、

Y = a( c - X2 ) + bX2 + u

Y =( b - a )X2 + { ac + u }

　また、対象レースは以下の条件を満たす。
・勝ち馬のレースPCIが58.0以上（スローペースであることを規定）
・芝の1600m以上（芝のマイル戦以上であることを規定）
・3歳未勝利戦（クラスによるブレを除外、かつサンプル数を確保）

【あとがき】

　まず重回帰分析を行うにあたって、どう考えても説明変数が足りないです。具体的には競馬場ごとのダミー変数など。つまり、ハイレベル戦として認定するための他のファクターを全て除外しなければ、分析を行って推定式を出したところで、それが真に仮説を証明するものとなり得ません。

　現状、素粒子郎はその説明変数を全て洗い出せるほどのエネルギーはないので、この仮説検証を重回帰分析で表現するのは不可能そうです…。（そもそも上の推定式すら合っているのか自信がない。というかそもそも重回帰分析する内容なのか？）

　簡易的な検証方法として、上述した対象レースについて、その出走馬の次走着順をそれ以外のレース出走馬の次走着順と比較することで検証することはできると思います。ただし、そもそも説明変数にあった、風と馬場による補正を施したMIN（ラスト3F目：ラスト1F目）のサンプル数を確保するのに膨大な時間がかかってしまうため、検証に至ろうとは思えませんでした。

　とはいえ、仮説の検証はなにも数値分析だけでなく、実際に予想に取り入れることによっても出来るのが競馬のいいところなので、今週以降の記事についてはこうした理論も取り入れながら作成したいと思っています。