今まで競馬界における法人名義の多くがクラブ法人、所謂一口出資という形で法人が所有馬の出資者を集め、出資金を元に馬を所有・維持の上で獲得賞金・手当等を分配金として配当するスタイルが主流だった。ただこの場合、一口馬主と言われる人間は商法上は匿名馬主扱いで、馬主資格のない出資者扱いとなる。

それが2000年代後半から、個人馬主が法人化するスタイルが出てきた。一番有名所では金子真人→金子真人HD（株）か。

これは主に税制上のメリットの面が大きい。

個人馬主の場合、競馬での所得は事業所得若しくは雑所得のどちらかとなり、事業所得に該当すれば、競馬事業で発生した赤字を他の所得と通算できるようになる。ただ、その場合だと累進課税の仕組み上、住民税と併せて最大55％の課税になる事がネック。

その為、競馬事業が黒字でも赤字でも出費金額が多額の人の場合は所得が「法人所得」が断然有利。その場合最大34％まで押さえる事ができる。その上、損害が出ても法人化していればその他の事業の利益・損失と合算出来て結果として法人税の節税になるパターンが出てくる。

それに加えて損失の繰り越しが個人の場合は3年だったのが法人は最大10年と大きなメリットもある。

ただあくまでクリアする条件が結構審査で厳しいので、財務状況次第では法人馬主は通らない事も多いのは留意が必要。

わかりやすいのは里見治の名義の変動だろう。里見治（個人）→サトミホースカンパニー（法人）→里見治（個人）と名義の変動はこの辺が全て起因であると思われる。里見は2012年に30億円の追徴課税（要は脱税）で10億超えの損害発生させたりしてからこの辺非常に厳しくなった。

この他に個人馬主の共有というのが少し前からあるが、この辺は「文字」で目に触れる機会が少ない上、説明が難しい例が結構ある。エア冠名で有名な（株）ラッキーフィールド（吉原毎文・世紀恵、東京鐵鋼（株））は以前より共有名義であるが誰と共有なのか非公表の為不明だったりする（多分社台ファーム関係だと思うが）

実情の一つとして、ちょくちょく名前が挙げられるLEXプロ（（株）レックス）がある。ココは本当に複雑で、1頭当たり10口（地方馬は20口）で数十万～数百万で主に個人馬主向けに共有募集するスタイルなのだが、実際馬主として登録されるのは様々な名義があり、（株）レックス・岡田牧雄（岡田スタッド、ノルマンディー）・吉田勝己（ノーザン）吉田千津（社台ファーム）・錦岡牧場のいずれかが「代表馬主」として馬主登録はされる為、募集馬リスト等をチェックしていないと実態が見えにくい事がある（特に吉田勝己名義は別のオーナーズ名義もある為）。錦岡牧場の名義で重賞勝ったイコピコも実はレックス共有。

実はレックス共有馬だったというのは

岡田牧雄→スノードラゴン、リッカルド、ローズプリンスダム等

吉田勝己→セイクリッドバレー、ゴールドドリーム等

吉田千津→クイーンズリング、ダンシングプリンス等

が該当する。

また、最近高知競馬の主役とも言える顔のユメノホノオも名義上は須田靖之の名義だが、実態は2名ないし3名による共有名義だったりする。

アスカノクリチャンのように冠名半分こして共有ですよアピールでもされないとなかなかわからないよ本当に、本人が言わない限り。

組合馬主と実態は近いのだが、あくまで個人馬主の共有は本人が馬主資格持ってないとご法度なのでそこが異なるが、実態が把握できない状況が横行しており、海外のように共有者は全員公表されるのが本来クリーンなのだがなかなか進まないのが現状となっている。組合も組合でクソなんだよ、訳アリで馬主資格剥奪された人間が親族や身内に迂回して登録してクリアしてる実態あるしな。

いや、それ個人名義でもあんだけどな。毎年黒船賞に出てくる現役馬の馬主とかな…。

そして最近急増しているは新興の法人名義・共有名義の馬主に関しては全く別ベクトル。上記のように節税目的の人間もいるし、ヲタク馬名が多い事で有名な（株）レッドマジック（片山晃、投資家）についてはほぼその例に近い。レッドマジックという由来は東方のレミリアスカーレットのスペルカードだと思う（東方ヲタなので）ので深い意味はなさそう。

問題は、実態を雲隠れさせたい、本人の名義だと何かと問題がある人間が紛れ込んでいる実態があるのではないかという事。いずれどこかで問題起きると思うけどね（もう起こってると思ってる）、名義貸しの温床になりかねないし。実際法人名義で持たれると中でどういう実態なのかJRAも探り入れる筋合いが無いのが実態。

ラウンドワン代表の杉野公彦の馬主名義のエムズレーシングや最近紅麹問題で多額の負債が見込まれる事、世間体もあって全て馬を手放した（名義上）雅苑興業は実態が小林製薬の会長である小林一雅である事は有名であるが、この他にも世間的に分かりにくい法人・共有名義が多いと思うので、メモ替わりに置いておく。暇な時に見て貰えれば。

ただ、注意したいのはその実態が恒久的ではないという事。最近の事例だとスリーエイチレーシング。元々立ち上げの際はシャドウ冠名の飯塚知一が代表で立ち上げた名義だったが、今は橋本征道が代表となりかなり色合いが変わった。こういう事もあるので、常にアップデートが必要になる。