昨年5月、樋野(ヒノくん)さんが、風に関する調査分析をされておりました。

競馬場の風向きデータが溜まっていたので、それを整理してみました。あと、こういった切り口の風のデータがみたいといったアイデアがあれば教えて欲しいです。

約3年分の風データ分析｜ヒノくん @hinokun49 #note https://t.co/gAUkRV1P6e
— 樋野竜司／ヒノくん (@hinokun49) May 10, 2023

向かい風は前有利だし、追い風は差し馬に有利というのは一般的にも言われている内容ですが、それを検証する形の大変貴重な考察記事です(まずはこちらを読まれることをお勧めします)。

当時ちょうど私も近しいデータを調査していたこともあり、その後にこんなGoogle Chromeプラグインを作成いたしました。

半日で審査終わって公開されてました。https://t.co/QAEriauiU8
tenki .jpの競馬場を表示したとき、直線での風向を追加します。 https://t.co/hc5trrXns8
— ふぉーてぃないなー (@49ermania) June 4, 2023

これを発表して7か月ほどですが、この間は必ず風向きと強さを踏まえてレースを見るようにして、記憶としても結び付けられるように努めてきました。そうして見てきた結果は樋野さん記事をなぞるだけのところもありながら、私なりにちょっと面白いなと思った事実もありましたので、データから遡って記事にしてみようかと、そんな企画です。

昨年といえば、京都競馬場での開催が再開したこともトピックでした。ちょうど今開催が始まったところでもありますので、今回は京都競馬場における穴馬激走のあったレース編。こんなレースも風で獲れたのかな？くらいの軽い気持ちでお読みください。(本記事では、アメダスで「京田辺」地点の、発走時間過ぎが一番近い時間帯のデータを使用しています)

まずはわかりやすい直線で真ん前からの向い風(北東-東北東)、常識的には逃げ馬に有利とされています。残念ながら今回の範囲では最大2mまでのデータしかなく、それでも一応前有利の傾向は見てとれますが、常に人気になりがちでもあり。視点を変えると、直線が向かい風ということは、向こう正面は追い風ということ。遅れずに追走さえできれば、ちょっとしたボタンの掛け違いが穴になる風向という感じでしょうか。

2023/11/5の2R、3着でダイシンサンディーが穴を空けているのに注目。1周コースの向こう正面は追い風で捲りやすく、典型的な穴パターンといえるでしょう。勝ったのは逃げ馬ですし、読み切れればワイド3,940円は美味しい配当。

直線で内からの向かい風(東-東南東)は基本的には前有利となり、風速もあればその傾向は出ているものの。この風向は3角が追い風になるということで、3-4コーナーが得意な馬にとっては助けになるパターンもあり。

2023/11/12の3R、3着ジーティームテキは3角最後方から遅れることなく馬群に突っ込み、前の馬を風除けに使って馬券圏内に突っ込んできたものでした。

直線で内からの横風(南東-南南東)、ゴール前は基本的に風を遮るものがなく真横から食らう形になります。前残りも捲りも追い込みもあり様々ですが、ポイントは3-4角がずっと追い風になることで、どの位置取りからでも4角3番手以内が理想。1周コースの方が穴が多いのは、向かい風となる1-2角で無理せず置かれずという要素が大事なせいではないかと見えます。

先と同じく2023/11/12の4Rは新馬戦で、芝ポケットから斜めにカットされた形のダートコースに入るスタート。こういうコース形態なのでテンが速い馬が先手を奪ったわけではなく、ダート2角出口に向けて内に入れる制御が効いた3頭がたまたま前を取れ、そのままというレース。その後ろに固まった馬たちはみな脚を殺され、外に膨れてしまった馬たちはみな離れた後方に置いて行かれ。前半での不利がそのまま致命傷となる、実際の映像を見るべき興味深いパターンでした。

直線で内からの追い風(南-南南西)、後ろの馬が有利とされています。4角で真後ろからの追い風になるわけで、1周コースでは4角を勢い付けて駆け抜けた馬が突き抜けることも。長い差し脚の使える馬に注意。

前2つで挙げたレースと同じ2023/11/12の10R、向かい風で始まったこの日は風向が変わり続け、この時間帯は後ろ寄りになっていました。9Rまでは半分以上が前の馬で決まっていた流れからの、西村淳・マーカンド・ムーアでの後方決着。多くの騎手に前の意識が強く残っていたとすれば、風向変化からのこの騎手での決着には納得。

直線で真後ろからの追い風(南西-西南西)、追い込みが一番利く風です。後ろからの好走が多いですが、前目で残った馬の好配当もある辺りは、それだけ常識として浸透しているということなのでしょう。結論として、能力とオッズのギャップに注意。

記憶に新しい2024/1/7の5R、芝のワンターンですがポケットからスタートするコース。3角までの長い直線でかかって終いを失うわけにはいかず誰も出て行かない中で、大外のA.ルメートルが絶好となる3番手を取って無駄のない走りで勝ち切りました。これも短期免許騎手らしい穴パターン、直前の4Rで最低人気が最後方から3着入線で穴を空けた直後というのもヒントか。

直線で外からの追い風(西-西北西)、一般的には後ろからが有利扱いなんですが…意外と難しいのが、外からの風はゴール前でスタンドに遮られ弱まるということ。詰まった差が詰まり切らずに脚色が一緒になることが多いのも、この風向での典型パターン(経験上では、地方競馬でも使える法則)。基本は押さえつつ、逃先-差追の組み合わせに注意すべきということの方が、より肝要かもしれません。

2023/10/28の4R、内横風でも取り上げた芝ポケットからダートに切れ込む新馬戦。このレースでは、スタート直後に中ほどの枠順の馬が複数外に膨れて他馬に不利を与え、内の馬だけがすんなりの競馬。それでも前-後決着になるのが、この風向。

直線で外からの横風(北西-北北西)、これが京都競馬場の穴の最頻出風向。ご覧のように多数の穴が出ていますが、先ほどと同じように前も後ろも両方来ます。その中で注目して欲しいのが、3角位置が極端に悪いものがいくつも混じっていること。この風向は3-4角がずっと向かい風で勢いが削がれ、直線に出てから改めてもう一勝負となるわけです。位置取りなりの上がりの使える馬にひたすら注意。

これも記憶に新しい、2024/1/8の11Rシンザン記念。3着ウォーターリヒトの直線の脚は強烈でしたが、これも3-4角で一旦リセットされたことによる賜物。この風での芝外回りの追い込みには常に注意が必要ですし、ダートの差し狙いが嵌るのもこのパターンです。

直線で外からの向かい風(北-北北東)、常識的には前が有利。しかしながら、これもやはりスタンドで風が遮られ、真向いの風に比べると逃げ馬が残りにくい傾向があります(これも競馬場を問わず、地方競馬でも使えることが多い経験則)。

2023/11/11の12R、逃げ馬が持たずに2-3番手のワンツー決着での穴。この日の1Rこそ逃げ切りの穴が出ましたが、これは8馬身の大差勝ちでのもの。大逃げは時折嵌りますが、そうでないなら結構な力差がないと勝ち切れない風向です。

一応、ほぼ無風の静穏のものも。穴の激走は1レースしかありませんでしたが、このレースは1番人気が逃げ馬でした。それが逃げ切れず先行した2番人気が2着、捲った馬が1着で、追い込んだ馬が3着。ゴール前の向かい風がないという点は同じですから、外からの向かい風に近い傾向がデフォルトと考えるのがいいのかなと、オッズ妙味的な方向として。

個人的には、(とにかく穴のよく出る)外からの横風をモノにすることが、京都競馬場攻略の一番の近道と感じています。外回り内回りの出し入れもいいですが、オッズ妙味という点ではあまり魅力がなく。極端な向かい風、極端な追い風ではあえて逆張りするのも、戦略として悪くないと思います。