　プロの予想家も、そうでない方も、予想と同時に悩むのが買い方。

　せっかく人気薄を◎にしても、「相手なし、無事死亡」とか、「3着は何もないんじゃあ～」とか、せっかく予想は上手くいっているのに買い方で失敗した経験は恐らく誰にでもあると思います。私も無限に経験してきました。

　予想家の間でも買い方の研究はされており、「○○の時は単勝を買うべき」「○○の時の複勝はNG」など、多種多彩な買い方についての記事を見かけます。ただ、通常の競馬予想の記事と違い、買い方に関する記事は、一度覚えてしまえば半永久的に使える代物であるにも関わらず、相変わらず少ないように感じます。回収率100%以上を目指すとなった時に、予想と馬券の重要度の割合は各々の感覚があると思いますが、それが予想：馬券＝5:5にせよ、6:4にせよ、7:3にせよ、予想の記事:馬券の記事が同じ割合で存在するとはとても思えません。

　また、出回っている記事についても、「控除率が低いから単勝が一番効率的」だとか、「ある程度計算できるオッズで、かつ3頭BOXで買っても死に票が出ないワイドがお得」だとか、確かに有用ではありますが、逆に言うと、その程度のレベルしか出回っていない、というのも事実です。別に私自身が買い方を究め切っている、とは全く思っていませんが、実際にその中身を過去の経緯とともに紐解いていくと、「単勝はそうした記事や考え方が出回りすぎて、プロがひしめくレッドオーシャンと化している」状態で決して効率的とは言えなくなってきていますし、「ワイドBOXで買っちゃうと結局印に序列をつけた意味とは？」という論展開に発展するので、徹底的な深堀りが出来ているとは言えないのかもしれません。

　今回は、まだまだ研究中ではあるものの、馬券に対する私の考え方について、1点だけにはなりますが、紹介できればと思います。

①3連単は全ての馬券を内包する

　正式名称、馬番号三連勝単式勝馬投票法。

　略して三連単ですが、的中率が低いかわりに、当たれば一発が大きい馬券として、（主に世の中のおっちゃんたちが）一攫千金を狙って愛用している馬券種です。まあ、正直概要に関して特に説明する必要もないと思いますが、この3連単において私が言いたいのは、3連単こそが、現在ある全ての馬券の王様である、ということです（重勝式であるWIN5はいったん棚に上げてください）。

　例えば、3連単1着固定流しで、◎→総流し→総流しにすれば、単勝を一緒の意味合いを持ちます（※）。また、先ほどの◎→総流し→総流しをマルチで購入すれば、複勝と同じ意味合いになります。

　※具体的な言及はしませんが、ここでは全て合成オッズありきで考えています。合成オッズを知らない方は、Google先生で「競馬　合成オッズ　とは」で調べると説明が掲載されているサイトがありますので、そちらをご覧いただければと思います（ついでにリンクも埋め込んでおきました）。

　馬連、馬単、枠連、ワイド、3連複も同様です。全て3連単で表現することが可能です。ただし、複勝を3連単で正確に表現しようとすれば、点数は膨大なものになりますし、複勝の方が控除率が低いので、複勝を3連単で表現すること自体に何ら馬券的な意義・妙味はありません。

②3連単をベースに考える

　ケーススタディーをしてみましょう。

　先週の宝塚記念、印を以下の通りとします。

　◎クロノジェネシス
　○キセキ
　▲サートゥルナーリア
　△グローリーヴェイズ
　△トーセンスーリヤ
　△ワグネリアン
　△モズベッロ

　仮に◎クロノジェネシス、○キセキが堅そうだと思った時、まず券種の選択で挙がってくるのが、馬連・馬単・ワイドあたりだと思います。

　ここで、馬連に注目してみると、3連単では以下の画像のように表現できます（左の印はいったん無視してください）。

　この時点で合成オッズは32.75倍。馬連は34.1倍ですので、（あくまで最終オッズ確定後ではありますが）馬連の方が券種の選択としてはGoodと言えるでしょう。

　ただ、もし私が、ブラストワンピースとラッキーライラックは馬券的妙味がなさそうだな（あるいは、切りたいな）……と考えていたとします。そこで、上の画像からラッキーライラックとブラストワンピースを抜いてみます。

　3番人気と4番人気を抜いたということもあり、合成オッズは48.36倍まで跳ね上がりました。普通に馬連を買うよりも14倍も違います。仮に馬連を10,000円分購入するつもりだった場合、配当は140,000円も違ってくることになります。

　せっかくなので、他の来なさそうな馬も抜いてみましょう。

　合成オッズが70.70倍まで上がりました。馬連のオッズの2倍以上です。と同時に、皆さんも馴染みがありそうな買い方になったのではないでしょうか。いわゆる「3連単軸2頭流し1・2着固定、相手5頭」ですね。実際には、これを払戻額均等買い（合成オッズ通りの買い目）でも構いませんし、あるいは印によって傾斜を付ける買い方も出来ると思います。

　さて、ここまで駆け足で説明しましたが、ここからが本題です。

　このケーススタディーの最初で、私は「馬連を3連単で表現する」としていました。そして、要らないと思った馬を消していった結果、「3連単軸2頭流し1・2着固定、相手5頭」という馬券が出来上がりました。その合成オッズは倍以上の差になります。

　逆に言えば、ただ単に馬連1点を買うだけでは、「本来自分が要らないと思っている死に票を買っている」ということになります。ここで言うと、3連単軸2頭流し1・2着固定の馬券のうち、消した相手11頭の馬券を買っている、という意味です。

　「じゃあ、馬連を買う意味がないじゃないか！」

　極論を言うと、その通りです。ただ実際のところ、私は馬連も普通に買っています。むしろ、そこが焦点ではありません。

　「先ほどのケーススタディーで出来た合成オッズの差は、一体どういう意味合いを持つのか」を考えてみて下さい。つまり、10,000円買った時に、350,000円相当の払戻を捨ててまで、馬連を買うことに何の意味があるのか、という問いです。

　私は、この35倍のコストを支払って、「リスクの低減」「購入金額の僅少化」「相手を考える思考時間の削減」を得ている、と考えています。

　1つ目の「リスクの低減」は皆さんもすぐに理解できると思いますが、ブラストワンピースとラッキーライラックを軽視するといっても、決して絶対に来ないとは言い切れず、完璧な競馬を見せた時に、3着まで持ってこられる可能性があり、それによって馬券が外れるリスクを無くすということです。言ってしまえば保険をかけているということですが、この保険をかけたとしても、合成オッズは十分確保できているので、問題ないと言えます。

　一方、2つ目の「購入金額の僅少化」は、少し？マークがついた方もいるかもしれません。

　これは、合成オッズの考え方をしっかりと理解する必要があるのですが、3連単は合成オッズ通りに買う、つまり、払戻が均等になるように買おうとした場合、これを完全にするためには、途方もない金額を購入する必要があります。恐らく、上記の3連単を誤差10倍以下で表現しようとすれば、最低でも50,000円くらいはかかってしまうのではないでしょうか。

　馬連1点であれば、払戻が均等になるように各々の買い目の金額を調整する必要がないので、何なら100円から買えます。これによって、「分不相応な金額を張る必要をなくす」ことが出来ます。ある意味リスクを減らしているとも言えますので、1つ目にも通じるところがありますね。ちなみに、逆を言うと、普段の1レースの購入金額が100,000円を超えるような人は、分不相応な金額とは言えませんので、上記の考えを徹底することで、合成オッズはいくらでも引き上げることが可能です。

　3つ目「相手を考える思考時間の削減」について。今回のケーススタディーのようにGIであれば、相手も含めてたっぷり考える時間を取ると思いますが、平場のレースなんかで上記のように思考を深めるには時間が圧倒的に足りません。当然、やった方が回収率が向上するのは間違いないのですが、重賞級のレースと違い、平場のレースは投票総数が少ないため合成オッズが刻一刻と変わっていきますし、オッズが常に流動的であるのに対して、レースとレースの間隔は、レース映像を逐一見ているとせいぜい5分程度しかなく、物理的な問題として思考を深めるのは不可能です。

　そういった時に、その思考時間を削減するために、より簡単な馬券に思考を落とし込む、というのは、コストパフォーマンスを考える上で、非常に有効な手段です。

　3連単を深く掘り下げていくと、以上のような馬券の仕組みが見えてきます。実際は、もう一つ、3連単が持つ意味を私は認識しているのですが、それはまたいつかの機会に。

　ちなみに、「馬連・馬単・ワイド・3連複・3連単は、2点目以降は全て死に票になるから無駄」という考えを持っている人をたまに見かけますが、私はあの考えを痛烈に批判します。

　上記の話とは少し論点がずれるかもしれませんが、例えばワイドという馬券は、3着以内に、指名した2頭が両方とも入線すれば的中となりますが、入線の序列については全く問われていません。

　◎ー○のワイドを購入したとして、的中の組み合わせは全部で6通りあります。でもこれ、例えば◎が1着堅そう、○は3着までなら堅そう、という予想だった場合にもワイドを選択しがちじゃないでしょうか。これは恐らく、馬連だと○の前に先着する馬がいそう→割られそうという思考が働いているものかと思いますが、先ほども述べた通り、ワイドは入線の序列についてまで指定しませんので、◎が1着で堅いと思っているにもかかわらず、◎が2着・3着でも当たる馬券を同時に購入していることになります。私は、これこそ死に票なんじゃないか、という気がしてなりません。

　ちなみに、この問題に対する回答は、◎→○→総流し、◎→総流し→○の3連単を合成オッズ通りに購入することです（この手段、私は頻繁に利用しております）。◎は1着堅そうで、○が3着以内堅そうという思考をしっかり表現できていると考えます。

　3連単の話を少ししただけなのですが、予想以上に長くなってしまったので、続きは次回以降にします。今回は3連単をベースに馬連やワイドについて考えましたが、3連複からワイドの話をすることも可能ですし、馬単から単勝の話をすることも可能です。

　券種と券種の間はシームレスである一方、その券種選択をすることが、どのような予想の思考表現に繋がるかを常に考える必要があります。予想を馬券で表現する際は、一度3連単に全て落とし込んだうえで、どういった思考をしているかをアウトプットするのもいいかもしれませんね。

　また、今回の話にあまり追いつけなかった人は、一度、合成オッズについて考えてみてください。合成オッズの理解を深めることは、回収率を上げることにも直結します。合成オッズを使いこなせるようになることは、馬券マスターへの道の第一歩です。