お久しぶりです。ぶらいあんです。

今回はクラウンプライドが出走するケンタッキーダービーのレース傾向について、以前noteで書いたものを加筆修正しながら解説していきます。

おそらくこれ以上ケンタッキーダービーの傾向を抑えている記事はアメリカにも無いんじゃないかと言う仕上がりになっていますので、長いですがぜひ読んでみてください。基本無料にしておきますので、参考になればご奉納など頂けるとめちゃくちゃ励みになります。

まずはケンタッキーダービーが他のレースと比較して特殊な点について書いていきます。

ケンタッキーダービーが持つ特殊性、その最大の要因とはズバリ「頭数が多いこと」。出ること自体が名誉みたいになってるのがその要因だと思いますが、例えばプリークネスSは（ローテの厳しさもあり）ここ数年は一桁頭数で行われることも多いくらいですし、真夏のダービーことトラヴァーズSも大体10頭前後、BCクラシックは比較的多いですがそれでも12-14頭で行われています。それに対しケンタッキーダービーは基本的に20頭フルゲートで行われています。これがレースにどのような影響を及ぼしていくのか、アメリカ競馬のレースの質やチャーチルダウンズ競馬場のコースも踏まえて解説していきます。

まずアメリカ競馬の特徴についておさらいですが、①テンからガンガン飛ばしていくこと②キックバックが激しく後方からは差しにくいという2点が挙げられます。特に①が重要で、最も負荷がかかるのがスタート～最初のコーナーになります。

次にチャーチルダウンズ競馬場について。

アメリカの競馬場はたいてい平坦小回りなのですが、それでもコーナー半径には微妙に差があり、チャーチルダウンズ競馬場は一周1マイル＝約1609mで直線距離は約376m。プリークネスSが行われるピムリコ競馬場は一周距離が同じで直線距離が約350m。ベルモントSが行われるベルモントパーク競馬場は一周1マイル半＝約2414mで直線距離が約330m。

一見直線距離が最も長く持続力が問われるように見えますが実は真逆で、ダート戦において平坦300mだけで差をつけることは難しいので、コーナリング性能が重要になります。また、上記の通り多頭数かつ最初のコーナーの負荷が大きいため、先手が取れるテンでの加速力が非常に重要になります。すなわち、コーナー角が急であり、かつ頭数が多いというケンタッキーダービー＞プリークネスS＞ベルモントSの順で機動力＞持続力へ適性がシフトしていきます。日本の競馬場で言うと新潟1800m＞阪神1800m＞東京2100mみたいなイメージで良いと思います。

一番わかりやすいのはサンデーサイレンス対イージーゴアで、ケンタッキーダービーでは先行力と瞬発力に優れたサンデーサイレンスが完勝、プリークネスSでは総合力勝負となりマッチレースに、そしてベルモントSでは持久力に優れたイージーゴアが準レコードでぶっちぎりました。BCクラシックがベルモントパークで行われていればイージーゴアが勝っていたと思います。

具体的にケンタッキーダービーで何が起きているかTrakusデータをもとに解説していきます。

Trakusの走行データから2-4f目、すなわち最初のコーナーを回った時のラップタイムを走行距離を補正してソートした表が以下になります。わかりにくいですが補正済みラップは真ん中の空欄の列で、1-4fラップは通過順の参考として記載したので補正していません。

馬名の色塗りは赤＝1位入線オレンジ＝2位入線黄色＝3位入線と言う意味です。

2021年

後に失格となるが、Medina Spiritがセオリー通りインで脚を溜めながら先行し勝利。世代最強馬Essencial Qualityは外々を回らされたロスが響き4位入線となった。インベタを手放さなかったMandalounもかなり上手い立ち回りを見せていた。典型的なケンタッキーダービーと言うレース。

2020年

コロナによる順延で9月開催となった影響もあり、例年と比べ小頭数となったためやや異なる傾向となった。力通りの決着で、のちのBCクラシック勝ち馬とトラヴァーズS・ベルモントS馬のワンツー。

2019年

脚を使って先行したかに見えたMaximum Securityだが、テンの速さと枠を生かして先手を取ってからは実はしっかり脚を溜めていた。ケンタッキーダービーを勝つのであれば完璧と言って良い立ち回りで完勝。2，3着入線の2頭も外枠の不利を最小限に抑える好騎乗。特に3位入線Code of HonorのJ.ヴェラスケス騎手は神騎乗と言って良いだろう。雨でキックバックが弱まったのもプラスに働いた。

2018年

勝ち馬はセオリーに反し、1角でやや外目を回しながら先行し脚を使ったが、それをものともしない圧勝。のちの三冠馬としてのポテンシャルの高さを見せた。勝負の1角をインでやり過ごしたGood Magicが例年であれば勝ちパターンだった。

2017年

19年Maximum Securityと同じく、テンのスピードで先手を取り、1角で脚を溜める典型的な勝ちパターン。逆にここで脚を使った馬を見てみるとBCジュベナイル勝ち・プリークネスS2着のClassic EmpireやTapwritをはじめベルモントS1～4着馬がおり、1角での立ち回りの差が大きかったことがわかる。

2016年

外目の枠を引いたが、しっかりポジションを取りに行き1角では内目を回ることに成功したNyquistが勝利。とはいえテンで脚を使ったのは事実であり、スタートで不利を受けながら猛烈な脚で追い込んできたExaggeratorとともに当時抜けた2トップだったのは間違いないだろう。Gun Runnerは上手く立ち回ったものの実力差があった。

2015年

Arrogateと並び近年最強馬であるAmerican Pharoahが能力ですべてを捩じ伏せた一戦。18番枠から外目を先行し1角では抜けた最速ラップ、その後も外々を回り続けるという典型的な負けパターンであったが、なんとそのまま勝利。震えるほどの強さを見せつけた。三冠達成するのも当然といった内容で、個人的にはこの時点では同じ三冠馬であるJustifyと比較しても一枚上の存在と考える。勝ち馬を追いかけて2着に食らいついたFiring lineも相当に強い内容で、プリークネスS以降順調にいかなかったのが悔やまれる。逃げたDortmundが例年の勝ちパターン。

2014年

好枠から上手く立ち回ったCalifornia Chromeが力通りの完勝。2，3着馬は内で脚を溜めた差し馬で、勝ち馬のプレッシャーで前が苦しくなったような印象。傾向としては例年通りの内容。

2013年

ハイペースに加え不良馬場になりキックバックが弱くなったことで差し決着に。テンの負荷が厳しかったPalace MaliceやOxbowが巻き返してベルモントS・プリークネスSを勝利しているようにペースの影響が非常に大きかった。雨が降ると差しが決まりやすくなるためこの手のレースが多くなる。

2012年

外枠ながら1角を最低限タイトに回って脚を溜められたI’ll Have Another、好枠から逃げたBodemeisterのワンツー。プリークネスSも2頭のワンツーであり、強い馬がある程度上手く立ち回ったことで力通りの決着となった。ラストでDullahanに詰め寄られたのはペースの負荷がやや強かった分だろう。17年Always Dreamingや19年Maximum Securityのように足を溜められればBodemeisterが逃げ切っていたはず。

2011年

逃げ馬のテン4fが48秒台と言う歴史的なスローペースとなり、1角の負荷があまりかからなかった例外的なレース。後半の末脚勝負と言うどちらかと言うとベルモントS寄りのレースとなった、ケンタッキーダービーとドバイWCは適性的にあまり近いレースではないが、ドバイWC勝ち馬が勝利しているのも納得のレース展開。後傾ラップの3頭でワンツースリーのケンタッキーダービーなど二度と見られないだろう。

ここまでTrakusデータが存在する2011年以降のケンタッキーダービーについて調べてきましたが、特殊な展開の2011年にNehroが残ったくらいで、1角で外を回した馬、負荷が大きかった馬はほぼ全滅していることがわかります。例外は三冠馬2頭で、まあ参考にはならないでしょう。

ほとんどの年で先行し、1角で内目1～2頭目を回した馬が勝利しています。良馬場では差し馬はヒモまで、不良馬場かつハイペースになると上記の2013年Orbや2010年、2009年のようにインから差し馬が突き抜けるケースも出てくるというのがケンタッキーダービーと言うレースです。3-4角の時点では多くの場合すでにどの馬もバテているため、1角をいかにスムーズに抜けられるかが最大の焦点となります。

2022年ケンタッキーダービーの隊列予想はまた別記事で。

～まとめ～

①1角をタイトに回ることが大事　内枠の先行馬が圧倒的に有利

②外枠を引いた場合は行き切って外2を取る必要がある

③差し馬はヒモまで　ただし不良馬場ではイン差しが決まる